一般社団法人 日本投資顧問業協会

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コーポレート・ガバナンス研究会

拡大版コーポレート・ガバナンス研究会

平成28年度第4回 拡大版コーポレートガバナンス研究会
『アセット・オーナーとして果たすべき役割とアセット・オーナーから見たアセット・マネジャーへの期待』

開催日:

平成28年11月11日(金)

ゲストスピーカー:

引間 雅史 様 上智大学 特任教授

研究会メンバー:

池尾 和人 慶應義塾大学経済学部 教授 座長
柳川 範之 東京大学大学院経済研究科・経済学部 教授
鹿毛 雄二 ブラックストーン・グループ・ジャパン株式会社 特別顧問
松尾 直彦 西村あさひ法律事務所 弁護士
岩間 陽一郎 一般社団法人 日本投資顧問業協会 会長

研究会専門メンバー:

西 惠正 アセットマネジメントOne(株) 代表取締役社長
渡邊 国夫 野村アセットマネジメント(株) CEO兼執行役社長
松下 隆史 三井住友アセットマネジメント(株) 代表取締役社長兼CEO
山内 英貴 (株)GCIアセット・マネジメント 代表取締役CEO

オブザーバー:

八木 博一 セコム企業年金基金 顧問
長尾 和彦 一般社団法人 日本投資顧問業協会 副会長専務理事

平成28年度の拡大版コーポレートガバナンス研究会は「アセットオーナーとして果たすべき役割とアセットオーナーから見たアセットマネジャーへの期待」をテーマとし、第4回の研究会には、上智大学 特任教授の引間雅史様にゲスト・スピーカーとしておいで頂き、わが国の学校法人の財務と資産運用、機関投資家向け資産運用業、リテール向け資産運用業、などについてご説明頂きました。その後、参加メンバーによる自由討論が行われました。引間様のお話の概要は、以下の通りです。

■日本の大学で、学生納付金、全大学の平均をとると収入に占めるいわゆる学費、学納金の割合は53%となっています。病院あるいは医学部があるようなところは病院収入が相当大きくて、そこが左側の事業収入に入ってきますから、逆に病院のない大学、医学部のない大学だけで、この比率をはじくと学生納付金の比率が7〜8割となっています。それに対し、下のアメリカの私立大学は学費の依存度が36%ですから、ほとんど3分の1になっているということで、この辺りは非常に大きな差がある。日本の私学の場合は学納金の依存率が極めて高いということが一つあります。もう一方ではほかの収入源として、アメリカの私立大学は例えば資産運用収入が17%、それに対して日本は2%。寄付の割合がアメリカは11%、日本はやはり2%。この二つを合わせてもアメリカは28%、資産運用収入や寄付金で収入があるわけですが、その部分に関していうと日本はたったの4%と、極めて大きな違いがある。補助金をとってもアメリカは15%、日本は10%という形で、財源の多様化という意味では日本はいま学納金の一本足打法に近い。このような形になっているということです。そんなことで、先ほど申し上げた家計の負担感もあって学費がなかなか上げられない。あるいは学費の依存度を上げないためにも、収入の多様化・多角化を進めていかなければいけない。そういったときに当然、寄付金も限界があるし、補助金も減少傾向ですから、資産運用収入の占める重要性が高まってくるわけです。

■例えば外部有識者を含む委員会などで、この辺のガバナンスを担保していますよというようなケースも出てきているかと思います。それはそれで結構だと思います。ただ、どうしても委員会という形だと意思決定機関ではないので、ないよりはいいと思いますが、実効性という観点でどうなのだろうというところは見ていかないといけないだろう。それから、いろいろな人事体系、人事政策ですが、これも大金融機関グループだと、ややもすると親金融機関の人事体系にのっとった形で、運用機関の人事体系も構築されているケースもまだ多いかと思います。その辺りはやはり資産運用会社の人事報酬体系はかなり業務の質からいっても、銀行なり証券なりと違う部分がありますので、独自性という観点から見ても再考される必要があるのかもしれない。それから、金融機関系列以外の独立系のマネジャー、これがなかなか日本の場合は存在感を発揮しにくいような状況があるわけです。そういったものも含めた厚みのある資産運用業界になってもらうという意味でのEmerging Managerの制度であるとか、その辺りはさらに展開していくとよいと思います。

■通常の例えば日本株のアクティブの会社と面談をしていて、「御社のエンゲージメント活動の具体例を直近のケースでちょっと教えてください」という話をすると、「別の担当者を連れてきます」という話になるのです(笑)。「通常のアクティブ運用では知らないよ」ということであるならば、それはメインストリーム化になっていないことを露呈しているようなものです。通常のアクティブ運用の人が、あるいは理想論を言えば営業の方やクライアントサービスの方が、エンゲージメントなどの事例を具体的に語れるようになると、「いや、この会社は本当にすごいな」ということになろうかと思います。そういう意味ではマネジメント全体、会社全体のコミットメント、あるいはマネジメントの理念というところが必要になってくると思います。

活発な意見交換により、アセットオーナーとアセットマネジャーに関わる議論について理解、認識を深められる興味深い内容になっております。是非ご一読ください。

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